高円山は奈良市にある春日山の南に位置している。山頂直下には奈良奥山ドライブウェイが通っていて、中腹には毎年夏に行われる慰霊大文字送り火で使用される火床がある。万葉集には高円山の情景を詠んだものが収められており、深い歴史を持つ風情ある山である。展望地である高円火床からは西側にそびえる生駒山を背景に奈良市街を中心として、遠く京都までの夜景が一望できる。奈良市街地のちょうど中心に位置しているため、碁盤目の形をした街をはっきり捉えることができることから最も奈良らしい夜景だといえる。特に日没後のトワイライトタイムに見るこの光景は青とオレンジのグラデーションのかかった生駒山の稜線がシルエットのように見えて美しく、その麓に光り輝く奈良市街が広がっている。何度もこの高円山火床を訪れたが、晴天に恵まれてこの美しい光景を目にすることができたのは、たった一度限りであった。