秩父の名山で知られる武甲山は埼玉県秩父市と横瀬町の境界に位置している。日本武尊(やまとたけるのみこと)が自ら甲をこの山の岩室に奉納したという伝説から山名が定着したといわれる。はじめてこの山に登ったのは昼間であった。その時はまだ山夜景という意識は全くなかったが、登頂して秩父市の景色を望んだ瞬間、夜景撮影の準備をしてこなかったことを後悔した。それから数ヵ月後、山夜景を目的とした夜間登山で二度目の登頂をした。そこに待っていたのは眼下に広がる秩父市の夜景は言葉を失うほどの景観美であった。そこまで感銘を受けたのは、まるで天の川夜景というべき独特の地形によって彩られているのだ。煌めく市街地の光はちりばめられた宝石と呼ぶに相応しい。このような魅力的で天の川のような美しい構図の山夜景を望めるのは、この武甲山の他には存在しないだろう。関東地方で最も芸術的な山夜景といえる。